2023年6月15日よりミラノで開催された第60回欧州腎臓学会(ERA 2023)に大澤院長の演題が採択され、発表を行いました。
腎性貧血の新薬であるロキサデュスタットについて多施設共同研究を行い、副作用を「Roxadustat-induced hypothyroidism」として発表し、世界初の知見についても明らかにしました。 今回の知見により副作用をきたす患者さんに特徴があることが広く周知され、日本及び世界の透析患者さんの治療に益があることを望みます。→ 発表内容詳細

腎性貧血の新薬ロキサデュスタット(エベレンゾ®)投与中の患者さんに発症した中枢性甲状腺機能低下症は、ケースレポートとして世界で2症例(ともに日本)のみが、報告されていました。しかしながら、実際にロキサデュスタットが甲状腺機能へ影響を与えるかどうかについては、市販後調査などから否定的な調査結果もありこれまでは不明でした。

大澤正人院長は、多施設共同研究により2021年9月~2022年11月にロキサデュスタットを内服した患者集団を解析し、①内服後に統計学的に有意な甲状腺機能刺激ホルモン(TSH)低下を認めること、②特に、既に甲状腺機能低下症にて補充療法中であるという特定の患者集団においては、全体の81.0%にTSH低下が認められ、さらに正常値以下への急激な低下は全体の45.6%という高い割合で引き起こされるため、内服リスクが非常に高いことを、世界で初めて報告しました。

この結果から、①ロキサデュスタット内服中の透析患者さんは甲状腺機能の定期的なチェックが必要である、②さらに元より原発性甲状腺機能低下症を合併している患者さんはたとえ補充療法により甲状腺機能が正常にコントロールされていたとしても避けるべきで、他剤の投与が望ましい、と結論づけました。

研究成果は、第60回 欧州腎臓学会(2023年ミラノ)において「Roxadustat-induced hypothyroidism」として発表しました。

薬剤性甲状腺機能低下症は、原因薬として今までに数種類の薬剤が知られています。腎性貧血の新薬として開発されたロキサデュスタットも、新たにその原因薬であることがわかりましたが、治療上、必要とされる患者さんがいらっしゃいます。ただ単に中枢性甲状腺機能低下をきたす一つの薬剤としてだけでなく、今回の知見により副作用をきたす患者さんに特徴があることが広く周知され、日本及び世界の透析患者さんの治療に益があることをを望みます。